研究概要 |
平成18年度の研究業績は、現在までのところ、原著論文1件、その他の刊行物(遺跡発掘調査報告書)2件(刊行予定も含む)、そして、学会・研究会発表2件である。それぞれの概略は下のとおりである。 原著論文では、東京都新宿区崇源寺・正見寺跡の17世紀後半〜19世紀前半を主体とする2つの寺院跡の一般都市住民層の墓域より出土した木棺の用材の樹種と形態を検討し、当時の身分・階層差と森林資源状況の変化の影響を評価した(鈴木・能城,2006a)。東京都内の近世墓地遺跡から出土した木棺の形態を観察し、用いられた木材の樹種を同定した。これらのうち、岩本町二丁目遺跡出土木棺材について、記録・計測した年輪幅の情報に、大山幹成助手(東北大学植物園)と共同して年輪年代学を援用し、西暦883年から1653年までのマスタークロノロジーの作成に成功した。この成果にっいては大山幹成氏らと連名で『植生史研究』誌に投稿のための論文を準備している。 遺跡発掘調査報告書では、新宿区四谷二丁目遺跡IIにおいて、木製品341点の樹種を同定し、19世紀の木材利用について検討した(鈴木・能城,2006b)。また、墨田区東京簡裁墨田分室地点遺跡から出土した平戸新田藩松浦家の庭園跡に用いられた護岸材をはじめとする木製品・木材およそ500点の樹種を同定した(鈴木・能城,2007)。 この他に、都内の複数の近世墓地遺跡から出土した数珠玉用材について、形態観察および樹種同定の作業を進めている。 こうした成果を第17回環境文化史研究会(於:東京大学)や早稲田大学考古学会第12回研究発表会において公表した。また、近日中に刊行が予定されている「出土木製品の用材考古学」(代表:伊東隆夫京都大学元教授)にこれらの成果を含めて執筆予定である。
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