本年は、研究初年度であり、以下の2点を中心に研究を進めた。 1点目は、葬儀改革にかかわる基本資料の収集、特に葬儀改革推進母体である殯葬管理センターおよび民政局を中心とした文献資料(葬儀年鑑、統計資料、改革方針の解説)を中心に収集した。上海は葬儀改革のもっとも進んだ地域であり、ここで試行、確立された方向性が全国的な政策へと還元されることから、新たな政策の検討される場所として重要な意味を持つ。とくに、葬儀改革の末端で実践にかかわる人々に焦点を当てた研究では、当該地域の動向に注目することが必要となる。そこで、2007年1月に上海の関連部門(殯葬管理センター、殯葬文化研究センター)を訪問し、現在の運動の主要な方針などをインタビューや討論を通じて情報交換を行った。 2点目は、主に現地調査に向けた準備を進めた。具体的には、調査予定地である陝西省中部地域(関中地域)の基本情報、とくに厚生や衛生制度を中心に現状検討に必要な資料を収集し、次年度に必要と思われる調査の枠組みを洗練させた。中国西北部は葬儀改革の進展度から見れば充分な浸透が図られていない地域であるが、すでに完成された「改革」よりもその運動の推進過程において多様な相互行為が発生すると予測される。そしてその相互行為は政策、旧慣習を行為の準拠枠としながら行われると考えられるため、本研究テーマにふさわしい調査地と考えられる。 同時に、葬儀改革に関する先行研究のほとんどが沿岸部に偏重していることから、まずはこれらを相対化するために、従来あまり注目されていなかった地方志記載の葬儀改革および旧社会の葬儀慣行を中心に資料を収集し、次年度の調査に必要となるポイントを確認した。また調査地の関連機関との連絡、研究上必要な物品の購入を行った。
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