研究課題
本研究は、啓蒙期イングランドにおける女性著述家たちの文筆活動を対象として、啓蒙という過程を女性がいかに経験したのかを明らかにすることを目的とする。具体的には、1780年代後半から90年代にかけて、さまざまに異なる立場から、政治的問題にかんする論争的な書物を出版しはじめた数名の女性たちのテクストを扱う。1年目にあたる本年度は、大きく分けて(1)方法論的な研究枠組みの確認(2)個別的な実証研究、という二つの作業に取り組んだ。以下、それぞれの概要を述べる。1.啓蒙研究の新地平をふまえたうえで、その方法を女性著述家の思想形成過程の分析にどのように活かしうるのかを検討した。その成果は、「イングランド啓蒙と女性--研究視角と問題設定」『青山学院女子短期大学紀要』第60輯(2006年)にまとめた。また、『イギリス近現代女性史研究入門』(河村貞枝・今井けい編、青木書店、2006年)に「革命の時代の男女平等論」を寄稿し、啓蒙期の代表的な女性著述家、メアリ・ウルストンクラフトをイギリス女性史の文脈に位置づけた。その後、二回にわたって(11月26日に青山学院女子短期大学で、12月16-17日に西南学院大学で)開催された合評会では、イギリス女性史の方法論的な問題や可能性を確認することができた。2.これまで本格的研究がなされてこなかった女性著述家エリザベス・ハミルトン(1758-1816)についての実証研究を進めた。2月17〜26日にはイギリスで史料調査を行い、ハミルトンの思想的立場が包括的に示されているA Series of Popular Essays(1813)の精読や、伝記的情報の収集に努めた。その成果の一部は、3月26日に京都大学人文科学研究所で行われた「越境する歴史学」研究会で、「1790年代イギリスの革命論争と「穏健派」女性の論理--党派精神の克服」と題する報告のなかで発表した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
青山学院女子短期大学紀要 第60輯
ページ: 13-29
イギリス近現代女性史研究入門(河村貞枝, 今井けい編)(青山書店)(第1章 第1節を分担執筆)
ページ: 4-17