関係諸問題に関する現状把握の年度と位置づけた平成18年度においては、大要以下の内容について研究を進めた。 (1)労働契約関係における一方的労働条件決定・変更事案に関する裁判例の収集と分類、また当該決定・変更の正当性判断に現れた基本的思想・理論および関係諸学説の分析。 (2)間接的労働関係(派遣・請負など)について、(1)と同様の分析。 (3)公務員労働関係について、(1)と同様の分析。 (4)戦後昭和50〜60年ころまでの主要な労働法原理論および関係憲法理論の集中的分析。 (5)ベトナム労働法制と労働組合の関係に関する、従前の研究のアップデートおよび成果の公表。 以上のうち、たとえば(3)については、JPU(旧全逓)北海道の協力を得るなどして、郵政民営化前後における郵政職員の身分や労働条件などの比較を行った。その成果については、JPU北海道主催のセミナーにおいて講演するなどの機会を得た。 また、(4)については、特に団結権概念の把握方法とその今日的意義について、1970年代以降の議論を中心に研究、考察し、一定の見解を確立するに至った。その成果の一部については、この問題の大家である西谷敏教授(大阪市立大学)を迎えて開催された北海道大学社会法研究会において報告し、同教授との討論などを通じて浮き彫りにされた問題点につき再検討を行った。 さらに、(5)については博士論文「ベトナムの労使関係法制と労働組合」(2004年12月学位授与)の内容をアップデートしたうえで、『ベトナムの労働法と労働組合』(明石書店2007年3月12日)として出版した。
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