平成19年度、本研究は自閉症スペクトラム(ASD)をもつ児童生徒の社会性スキルの獲得・向上を目指した支援手段、Social Narrativesの実践とその有効性の検討を行った。主な研究目的として、(1)保護者・地域教育関連機関との連携による支援の実践、(2)Social Narrativesに対するテクノロジーの応用、の2点に焦点を絞った。年度末までに8名のASD特性をもつ小・中学生に、本人の特性、学校環境、家庭環境に合わせて個別のSocial Narratives支援を実施した。 (1)保護者・地域教育関連機関との連携による支援の実践 Social Narrativesの形態にはさまざまなものがあるが、今年度の実践を通して、小学低・中学年の児童には好きな漫画やゲームのキャラクターを利用した支援ツールの開発、小学高学年・中学生の生徒にはより本人主導の形で支援ツールを作成していくことが効果的な支援手法であると確認した。2名の参加者は年度末に中学校への移行を迎え、本研究における支援も移行を主軸としたものとなった。移行後の経過は今後もモニターしていき、支援を継続する予定である。 (2)Social Narrativesに対するテクノロジーの応用 3名の参加者にテクノロジーを応用したSocial Narrativesの実践を行った。つまり、対象児の行動を録画したものをデジタル編集し、マイクロソフト社パワーポイント上で、叙述部分の文字・音声と映像が一つの画面で再生可能とした。3名とも、対象行動の減少が支援開始直後から観察された。これは、Social Narrativesとビデオセルフモニタリングの両効果が考えられ、自分自身を見ることによってSocial Narrativesの叙述部分がより理解しやすくなったと思われる。ツール開発も容易であることから、この支援形態は短期間の社会性スキル支援に今後利用可能と思われる。
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