本研究の目的は2部門最適経済成長モデルの最適経路の導出及びその動学を分析することであるが、18年度は特にレオンチェフ型モデルにおいて将来効用の割引率が正の値を取るときの最適経路及び動学に重点を置いて研究を行った。主な研究成果は以下の3点である。1)将来効用を弱く割り引く時すなわち割引率が1により近い値を取る時、最適経路は将来効用を割り引かない時の最適経路と一致する。2)将来効用を強く割り引く時すなわち割引率がゼロにより近い値を取る時、オプティマルポリシーはチェックマップ及びテントマップと呼ばれる関数で特徴づけられ、複数の周期を持つ最適経路が存在する。3)フォン・ノイマンファセットの双対線、及び、トラッピングスクエアを導出し、これら2つの関係により2)で上げた周期解の周期の数が決定される。これらの研究結果は、最適経路が割引率に応じてどのように変動するのかを明らかにし、次の研究課題である最適経路の変動の分岐点となる割引率の導出に大きく貢献するであろう。 以上の研究成果は、2つの論文"On Specialization and Chaos in the Two-Sector Leontief Model"、"Discount Factor and Optimal Policy in the Leontief Two-Sector Growth Model"としてまとめ、平成18年10月に米国Purdue Universityで行われた2006 Midwest Economic Theory Meetings及び平成19年2月に横浜国立大学近経研究会において、それぞれ研究報告を行った。また本研究はジョンズ・ホプキンス大学アリ・カーン教授との共同研究の一環であり、18年度は3月に約20日間研究代表者がジョンズ・ホプキンス大学を訪れる形で集中的に研究を行い飛躍的な研究成果をあげることができた。
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