研究概要 |
本研究は、国内外のサイエンスをベースとした研究開発型企業の研究開発組織のグリーン化のケース、特許データ、論文データ、コーポレートデータなどの基礎データを収集・分析し、研究開発組織のグリーン化のベストプラクティスを実証的に明らかにすることが目的である。 まず、本年度は、1990年後半以降環境対応が盛んになされた産業から調査実施可能な企業を抽出し、訪問調査を行い、典型的な企業を事例として、研究開発組織のグリーン化とイノベーションの関係に関する分析に焦点をあてた。まず、研究開発組織のグリーン化にかかわる既存文献・事例調査を行った上で、米国のカーペットメーカーのShaw industries,Inc、エアコンメーカーとしての三菱電機、ダイキン工業への訪問調査を行った。Shaw industries,Incは、1990年後半から現在に至るまでに、C to C(Cradle to Cradle)というコンセプトに基づき、技術的及び生態学的にリサイクル可能な商品へとビジネスモデルを移行することに成功した企業であった。そのイノベーション過程においては、明確な環境に特化した研究開発組織は存在しないものの、社長からのトップダウンによるリスクを恐れないビジョンがドライビングフォースとなり、イノベーションが実現したことが明らかとなった。つまり、大きな環境部門を持たない形態で環境配慮型製品のイノベーションが実現された。また、エアコンメーカーの三菱電機及びダイキン工業の事例を分析すると、1990年後半から現在までに、環境配慮をする以前から存在した技術的要因がドライビングフォースとなり、省エネ率の高い環境配慮型製品が実現したことが明らかとなった。エアコンメーカーの場合は、社内の組織変革は主なイノベーションの要因でない可能性が示唆された。
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