研究概要 |
本研究の目的は,第1に,身体の動きが極めて微弱微細な超重症児の身体の動きの発生および拡大を促がす係わり方を明らかにすることであり,それをふまえた上で,第2に,見出された身体の動きの意味について検討することであった.本年度は,昨年度に引き続き,超重症児1名への教育的対応を継続するとともに,これまでの経過の一部,11カ月分,41セッションの経過を,特に係わりの内容と経過の詳述に焦点をおいて整理した.その結果,まず,係わりの内容は,対象児が筆者の働きかけや状況変化を自身のうちに取り込む間口となる感覚系および環境変化のきっかけとなる運動系および係わりの質的相違に基準をおき,大きく7種,すなわち,「身体被接触系」,「身体他動的触覚運動系」,「身体運動増幅系」,「匂い系」,「音・振動系」,「揺れ系」,「スイッチ/センサ-一音・振動/環境変化系」に分けることができた.各々の係わりの内容について,その設定理由と実行の際の方針などについて言及した.次に,係わりの経過を整理した.経過は,「「スイッチ/センサ-一音・振動/環境変化系」の係わり」,「身体各部への働きかけと左手の動きとの関係への気付き」,「聴覚系への働きかけと左手の動きとの関係への気付き」,「「身体運動増幅系」の係わりによる左手親指の動きの発現頻度の増加」に整理され,各々について,係わりの具体的様子を示す記録の一部を取り上げた.結果より,以下の3点について考察することができた.すなわち,「係わりの展開について」では,係わりを展開する際の係わり手のあり方について,「実践的見識の蓄積について」では,係わりの経過を丁寧にことばに変換して整理することの意義について,「超重症児への教育的対応の意義」では,係わりの過程(プロセス)を重視することの意義について,特に言及した.
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