1.結社の自由の実効化という観点から、非営利団体法制の体系化を図るのが本研究課題の目的であるが、本年度は、結社の自立的活動を支援する非営利法人制度に焦点をあてて研究を行った。具体的には、2006年に創設された「一般社団法人制度」について、フランスの非営利団体法制を比較対象としつつ、結社の自由の視点からその憲法的意義を検討する作業を行った。 2.本年度の研究で得られた新たな知見は、以下の通りである。第一は、憲法上の結社の自由保障の効果には、設立された結社が法人格取得を求める権利、すなわち「法人格取得権」が含まれるのではないかということである。これは、従来の日本憲法学では必ずしも意識されてこなかった問題である。ところが、フランスで初めて結社の自由を認めた1901年結社法は、結社設立の自由の保障と同時に、結社自体が容易に法人格を取得できることまで保障しており、さらに、この権利は、1971年憲法院判決によって憲法的保障にまで高められている。これは、結社の存立保障はその活動保障にまで及ばなければ実効性を伴わないということを実質的理由とするが、こうした考慮は、日本国憲法下での結社の自由解釈についても妥当するものと考えられる。第二は、これと関係して、新たに創設された一般社団法人制度は、準則主義による簡便な法人格取得を認める点で、法人格取得権を具体化する法制度として捉えられるのではないかということである。その意味で、同制度を設置する一般社団・財団法人法は、結社の自由保障法としての資格をもつ。そしてこの観点から、宗教法人法等の法人法と同様、目的規定・解釈規定を置くなどの具体的措置を講じることによって、同法の憲法上の位置づけが明確にされるべきことを指摘した。 3.本年度の成果をふまえて、次年度は、結社活動を財政的側面から支援する優遇税制・補助金制度のあり方を検討し、その位置づけを明らかにする。
|