平成19年度における研究目的は、(1)生活改善同盟会(のち生活改善中央会)の活動状況の解明、(2)生活改善同盟会と団体外部の官製運動と連携の様相の解明、(3)生活改善同盟会における中心的人物の言説・思想の解明、であった。 (1)については、平成18年度の研究作業にも含まれていたものであり、今年度は昨年度の資料収集をふまえた論文執筆作業が中心となった。その研究実績である、「昭和前期における生活改善中央会の組織と事業」(『兵庫教育大学研究紀要』第31巻2007年9月)では、先行研究で殆ど言及の無かった、昭和前期に焦点を置いて生活改善運動を分析した、 (2)については、今年度の文献収集の中心となる作業であった。その文献収集をふまえた研究実績である、「戦前生活改善運動史研究に関する再検討と展望-運動を支えた組織・団体をめぐる論点を中心に」(『兵庫教育大学研究紀要』第32巻2008年2月)では、生活改善運動史研究に関するこれまでの研究状況のレビューを行うとともに、生活改善運動においてこれまで曖昧にしか言及されてこなかった、「組織・団体間の連携」という観点から運動の実態を分析した。 (3)については、平成18年度の研究実績の中にも含まれていたものであり、今年度は昨年度の資料収集・草稿作成をふまえた論文執筆作業が中心となった。その研究実績である、「大正後期・昭和前期における教養活動・余暇活動と〈調査の視線〉-社会教育調査史研究のための一試論」(『生涯学習・社会教育研究ジャーナル』第1号2007年11月)では、生活改善運動だけでなく、大正・昭和初期の社会教育活動に対する「科学的分析」を標榜する言説・思想全般をとりあげ、その認識枠組みに関する考察を、これまで社会教育研究になかった調査史的視点から行ったものである。
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