教育の成果や生徒の能力が未知な状況下で、効率的な能力別学級編成のあり方を明らかにする理論モデルの構築に努めた。能力別学級編成を行うことで、各学生の学力到達水準に応じた、より効果的な教育が可能になると期待される一方で、早い段階での能力別学級編成は、教育の不確実の存在がゆえに、様々な形の非効率を生じさせると考えられる。こうしたトレードオフに直面した状況で、能力別学級編成を行うタイミングならびに学級の相対規模に関して、望ましい教育システムのデザインを明らかにする理論的枠組みを提供することが目的である。 特に今回の研究では、早い段階での能力別学級編成がもたらす非効率として学校卒業時の労働市場でのマッチングの不確実性に焦点を当て、学校の新卒者と企業とのマッチングにおける摩擦の存在が、能力別学級編成を行うタイミングならびに学級の相対規模に関して、いかなる影響をもたらすかを明らかにする理論モデルを構築した。また、そのような理論的枠組みに基づいて各国間の教育システムデザインの相違、ならびに戦後教育の制度の変遷の実証的な説明を試みた論文をワーキングペーパーとして発表した。
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