研究概要 |
本研究は平成18年度からスタートした2年間で終了する予定のプロジェクトである。プロジェクトの内容は、1年目には実証に必要なデータを収集し、2年目にはデータを分析し、その分析の結果に基づいて、解釈を行う。 本研究の目的は、決算短信という形で開示されている経営者予測と実績値との乖離は、単なる経営者の予想外の事象が発生した結果であるか、あるいは経営者が都合のいいように予測値を開示した結果であるかを検証する。さらに、証券アナリスト予測を用いて、経営者予測の有用性も検証する。予測情報の利用者でもあるアナリストは、経営者予測が有用であると考える場合、経営者予測を自らの予測値に取り組むと考えられる、有用でないと考える場合、アナリストは、経営者予測を参考せずに、独自に予測値を作成し、発表すると考えられるからである。 1年目の18年度は、予定通りにデータを集める作業を中心に研究を進めてきた。本研究は、東京証券取引所の四半期情報の導入にあわせて、年度末決算短信と中間決算短信のほか、四半期決算短信という3つの短信から経営者予測を集めることにした。四半期決算短信は、平成16(2004)年度から開示されるため、本研究は、平成16年度から最新の予測値が開示される平成18年度を検証期間とし、決算短信を収集することにした。 東京証券取引所全1部上場企業が検証対象となっているが、経済環境による影響を排除するため、いくつかのサンプル選択基準を設けた。平成18年3月31日における東京証券取引所1部上場企業は、1,694社がある。そのうち、サンプル基準を満たしている企業は946社である。この946社を検証サンプルとし、全サンプル企業の年度末決算短信、中間決算短信、四半期決算短信と実績値を集めた。予測値のデータベースに関しては、決算短信NEEDS-Financial Quest、証券アナリスト予測はトムソンファイナンシャルを用いる。 現在、中間決算短信と四半期決算短信で年度末決算短信と異なる予測値を開示した企業とそうでない企業を分けて、乖離率を計算している。この結果をアナリスト予測の乖離率と比較して、経営者予測値の乖離率をもたらす原因と経営者予測値の有用性を明らかにしたいと考えている。なお、本研究は、平成19年度の日本会計研究学会第66回大会で発表をする予定である。
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