本研究ではNBER特許データベースから地域イノベーションパネル(1983-96年)を構築し、地域における産業R&D、大学研究、産学連携が産業のイノベーションに与える影響を技術分野別(医薬、化学、機械、コンピュータ・通信、エレクトロニクス)に分析した。3SLSによる知識生産関数の推定結果から以下の点が明らかとなった。第一に、医薬、通信・コンピュータでは大学研究がイノベーションのクオリティ(特許の被引用件数)向上に貢献しているが、その他の技術分野では大学研究は産業のイノベーションに影響を与えない。第二に、医薬では、大学から産業への知識スピルオーバーは地理的に制約されており、専ら地域内(同一都道府県内)の大学研究がイノベーションのクオリティ向上に貢献している。第三に、どの技術分野においても、産学連携(大学と企業の共同研究)は大学知が産業に波及する経路として有効ではない。どのようなスピルオーバーチャネルが有効かについては、更なる分析が必要である。 本研究の成果は国際・国内学会で報告された。
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