研究概要 |
平成18年度は、国際事業提携、信頼関係および経営支配、日本企業の中国事業展開について、英語、日本語及び中国語の文献を幅広くサーベイした。特に信頼関係と経営支配というコア概念に関する最先端の理論研究の成果を把握し、日本企業の中国進出の最新の動向も理解できるようになった。繊維業界と電機業界の企業をそれぞれ一社選別し、日本国内本社及び中国上海市、江蘇省にある子会社を訪問して、インタビュー調査を実施した。 以上のような調査研究の内容の一部を1つの論文にまとめ、『東洋学園大学紀要』に掲載された。その論文は、ポーターの競争優位の価値連鎖のフレームワークに依拠し,日本製造業企業の中国事業展開の最新動向を考察したものである。製造活動は従来の低レベルの汎用品の加工組立から,次第にコア技術を用いた高付加価値品の製造をも行い,製造機能の高度化が進んでいる。販売・マーケティング活動は,独自の販売・営業拠点の構築に取り組むと同時に,中国市場の発展の特徴に基づいた競争ポジショニングの明確化の要求に応じ,中国の現地企業との提携関係の構築も重要視され始めている。原材料・部品の現地調達は高い水準に達しており,中国現地のサプライヤーへの技術指導が積極的に行われている。研究開発活動に関しては2000年代に入ってからの熾烈な市場競争に対応するために,中国における開発志向の拠点の設立が活発になり始めている。人事・労務管理に関しては,そのオペレーションにおいて日本的慣行がかなり導入されているが,中国現地の人材のキャリアに対する事実上の制限,日本本社からの不十分な権限委譲及び曖昧な責任体制が日本企業の伝統的な国際経営上の問題点として指摘されている。全体として,価値連鎖の諸活動が中国現地に益々根付いてきており,全面的な経営機能を備えるような中国事業経営拠点が形成されつつある。
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