「西欧的」な「知る権利」・情報公開との比較の上で、「中国的」な「知る権利」・情報公開の到達点およびその特質がいかなるものであるのかを明らかにすることを試みた。 2006年夏季から秋季にかけては、研究は日本国内においての資料収集を中心としたものであった。すなわち、研究課題である「中国における「知る権利」および情報公開」に関して、すでに制定・公布されている法律法規、中国内外で発表されている学術論文を可能な限り収集し、それらの整理・分析につとめた。 2006年10月には、中国の首都である北京市を、同年12月には、中国の地方都市である広東省汕頭市を、それぞれ訪問した。それらの訪中において、文献資料の入手につとめただけでなく、現地の研究教育機関(中国社会科学院法学研究所、汕頭大学法学院・地方政府発展研究所)の法律・政治研究者と交流した。彼らは大学教授であるだけでなく、中央・地方政府において立法や政策立案に直接的に携わっており、彼らとの交流は中国における情報公開と「知る権利」について理論面と実態面の双方から分析を試みている私にとってきわめて有益であった。また、首都と地方都市をそれぞれ訪問することにより、「知る権利」および情報公開をめぐる中央と地方の対応の温度差について重要な視座を得ることができた。 2007年1月には、それら日本および中国での資料収集やインタビューをもふまえた小論「中国からみた国際秩序と正義-「中国的人権観」の15年-」(『思想』)を公表した。同小論は、中国政府・共産党の人権観および人権政策の変化について、中国政府の国際人権規約への署名、中国憲法の改正、中国国内の情報公開の進展等、様々な事象から論じたものである。同小論の執筆は、今後、私が中国における「知る権利」と情報公開についての研究をさらに深化・発展させていく上で、必要不可欠な前提をなすものである。
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