本研究は、日本と米国の大企業を対象とした事例調査から、業績管理と報酬管理の連動性に関する国際比較分析のフレームワークを抽出しようとするものである。研究の初年度にあたる2006年度は、申請した研究計画にしたがって、以下の作業を行った。第一は、研究環境の整備であり、PCを始めとしたオフィスで使用する機材及び録音機器等の調査で使用する機材を調達・整備した。第二は、ヒアリング調査と並行した本研究テーマに関わる文献・資料のレビューであり、国内外の文献・資料を収集・整理した。ここから得られた知見としては、2000年前後の米国において実務誌を中心に関心を集めた業績管理(performance management)について、例えば英国では1990年代初頭からきわめて良質な学術調査がなされていたこと等を指摘することができる。第三は、本研究の中心となる日本及び米国での事例調査である。日本での企業調査については、本研究で特に注目している電機メーカーの人事部に複数のルートからアブローチしたが、現状ではスケジュールを調整するにとどまっており、調査を実施するまでには至っていない。一方、米国での企業調査については、現地大学の研究支援者や同じく電機メーカーの人事担当者と接触し、調査のスケジュールをおおむね確定した他、アプローチしやすい労働組合のローカル等に予備的なヒアリング調査を実施した。ここから得られた知見としては、経営に対抗的と見なされることの多い米国の労働組合の中にも、一部のホワイトカラー系組合には、業績管理に対するきわめて協力的な態度が認められることを指摘することができる。第四は、2006年度以前から継続してきた本研究テーマと密接に関連する研究成果の公表であり、これを学会及び学術誌等で実施した。その具体的な内容については、次項の11「研究発表」に記した各業績を参照されたい。
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