=臨床的特徴の解明= 不器用さを持つ児童の臨床的特徴の解明のために、半構造化面接を確立し、医学的診察、微細神経学的徴候の検討、運動発達検査を含む種々の検査を実施した。対象は不器用さを持つ症例10名(9-12歳)、健常対照児62名(6-12歳)である。 1.半構造化面接 周産期、発達歴、家族歴、感情障害などの合併症状の情報を収集した。結果、症例群は運動発達の遅れを認め、また不器用さをもつ家族の存在、ADHDやLDの合併が多くみられた。 2.医学的診察 視覚・聴覚・触覚・位置覚の検討を行ったが、両群とも明らかな異常は認めなかった。 3.微細神経学的徴候(Soft Neurological Sign : SNS) SNSは9歳未満では健常児群でも多くみられるが、過去の報告と同様に9-10歳頃に消失する。一方、症例群は同年齢でもSNSが見られる率が高く、健常群より消失する時期が遅れるという知見を得た。また、SNSのバランスと協調運動に注目し検討している。さらにバランスでは、片足で立ちつつ姿勢を変化させる新しい課題を作成し検討をしている。この課題では、片足でバランスを「保持」するだけではなく、姿勢の変化に対応して「調整」する能力が必要とされ、バランスが乱された時の姿勢応答の側面も評価できると考えている。協調運動では、加速度計を用いて前腕の回内回外の変換運動と反対側の付随運動の計測を試みている。変換運動の周期の変動より、評価の難しい協調運動の拙劣さを数量的に評価できると考えている。 4.運動発達検査 9-10歳の症例群では、特に手先の器用さ(ナットをボルトに入れる課題)、ボールの両手捕球、静的・動的バランスが悪いとの知見を得た。今後さらに詳細な解析を行うと共に考察を加え、成果をまとめていく予定である。 平成18年度は、半構造化面接の確立やSNSの詳細な検討を行った。今年度はその経験を活かし、更なる臨床的特徴の解明をすると共に、機能画像測定をしていく予定である。
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