研究概要 |
本研究は、生後4ヵ月から9ヵ月の乳児を対象に、初期のコミュニケーションの発達の基盤となる他者の意図性の理解について多面的に検討することを目的とした。具体的には、平成18年度には、Still-face paradigm(Tronick et.al,1978)を用い2つの実験研究を行った。 1つは、従来のStill-face実験の発展として、乳児とかかわる他者の目または口が見えない条件を設定し、still-face効果が通常の場合に比べてどのように異なるのかを、乳児の他者への注視と微笑みの時間を反応測度として比較検討した。通常のstill-face条件においても、Still-face効果は見られることが示唆された。また、乳児の注視と微笑みといった測度ごとに、口または目が見えない場合の反応は異なることがしめされた。 2つには、生後4ヵ月の乳児を対象にしたブックスタート事業との連携をしながら、4ヵ月児への絵本の読み聞かせ場面におけるstill-face効果を検討した。通常の絵本の読み聞かせ条件(統制条件)と2つの実験条件(単調な絵本読み条件、絵本読みなし条件)を5つのエピソードを通して、個人内の変化を乳児の注視と微笑みの2つの測度を用いて検討した。4ヵ月児においては、絵本読みが突然Still状態になることにより、乳児の読み手や絵本に対する注視や微笑は減少することが認められた。従来のStill-face実験では、通常の乳児とのかかわりがstill状態をつくることにより、乳児の注視や微笑は激減し、乳児から従来のかかわりを取り戻そうとする働きかけも見られるとされているが、生後4ヵ月という初期の発達において、絵本の読み聞かせというルーティンにおいても社会的随伴性を期待していることが示唆された。 平成18年度は、Still-face paradigmを用い、社会的相互交渉の文脈を実験的に設定し、どの程度乳児が他者に社会的随伴性を期待しているのかについて検討してきたが、平成19年度は、他者の注視や視線、指差し、リーチングといった動作がもたらす意図性の理解について、コンピュータで統制された刺激提示による実験を行っていく。
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