本研究の目的のひとつは、カリキュラムマネジメントの構成要素の関係性を示したカリキュラムマネジメント・モデル(田村2005)を考察の枠組みとして、教師のカリキュラムマネジメントの力量の内実を明らかにすることである。この枠組みに基づいて、A市において、市立小中学校の教務主を対象とした悉皆調査(質問紙調査)を実施した。これは各学校のカリキュラムマネジメントの達成度と、それへの教務主任の関与の度合いや、両者の対応関係を分析するためのものである。この調査からは教務主任はカリキュラムマネジメントの大半の要素に関与していること、教務主任の関与についてもカリキュラムマネジメント・モデルによって分析可能なこと、教務主任の関与の度合いの高い要素については学校の達成度が高くなることなどが明らかになった。この分析結果については、日本教育工学会第22回大会にて口頭発表(題目「教務主任のカリキュラムマネジメントへの関与の状況」)を行った。また、現在、九州教育経営学会に投稿するために分析を進めて論文を執筆中である。 この結果をベースとして、教師がカリキュラムマネジメントの力量を形成する過程を解明することも本研究の目的である。特に教務主任や主幹の力量形成過程及び要因を明らかにするための第一段階として、本年度は主任層および管理職を対象としたインタビュー調査を実施した。インタビュー内容は録音・テープ起こしをして質的データとして分析し、力量形成要因および形成過程についての理論を生成する予定である。具体的には、東京都(対主幹)、兵庫県(対研修主任)、福岡市(対教務主任および管理職)インタビューを行った。そのほかにも月1回程度の割合で、福岡市内の教務主任数名とともに、教務主任に必要な力量等に関するディスカッションを行ってきた。これらから得られたデータを分析する手法として、質的なデータ分析手法についての研究も進めている。
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