【目的】 ・幼児を対象に道具操作以外の模倣課題を実施し、模倣のパフォーマンスを変動させる要因を分析する。 【研究1】 ・幼児40名を対象に、右手や左手を用いて身体部位を触れる身振りを模倣させた。effecter(右手/左手/両手)×movement(同側/反側/同側と反側)×object(耳/肩)の変数を操作し、20種の動作モデルを設定した。また前年度と同様、直後摸倣と遅延模倣(15秒後)を設定した。結果、直後模倣と遅延模倣でエラー反応の生起パターンが異なっていた。これは幼児を対象とした道具操作の模倣の結果と異なっており、提示する動作モデルの特性や他の要因の関与が推測された。 【研究2】 ・幼児45名を対象に、積木の操作を模倣する課題を行った。単に積木の操作を模倣する場合(統制条件)、積木の操作の模倣が、最終的に特定の図柄(トラックなど)を構成する目標の一部となる場合(視覚条件)、構成した特定の図柄に関して言語的なラベルを付与される場合(聴覚条件)でパフォーマンスを比較した。結果、条件の違いの影響は見られなかった。但し、被験者の年齢の配置などの検討課題が考えられたため、事物操作に目標を付与する文脈の影響については課題が残された。 【まとめ】 ・幼児の模倣は、提示する動作モデルの特性や他の要因に影響を受けることが推測された。一方、明確な結果は得られなかったが、動作モデルの提示と関連する文脈が、模倣のパフォーマンスを変動する可能性も検討課題として残された。今後、記憶容量やプランニングのような内在的要因や、動作モデルの提示文脈のような外在的要因の影響を検討しながら、関与要因を包括した処理様式のモデルを考案していく必要があると考えられた。
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