研究概要 |
初年度は,自閉症児のきょうだいへの家庭における教育的支援プログラムの開発に向けて,自閉症児とその家族への支援が先進的かつ体系的に実施されている米国ノースカロライナ州を訪問し、個別家族支援計画(Individualized Family Service Plan。以下,IFSPと記す)に関する資料収集と文献研究を行うことを目的とした。ノースカロライナ州立大学チャペルヒル校とその附属機関であるFrank Porter Graham Child Development Center及びChapel Hill TEACCH Centerを訪問し,IFSPに関する資料・文献の収集,家族支援に携わる教授,研究員などに聞き取り調査を行った。また,支援計画の作成会議にも参加した。それらの結果,本年度では下記の新たな知見と示唆が得られた。まず,支援計画作成へのきょうだいの参画については,専門家や支援者の意識が必ずしも肯定的であるとは限らなかった。また,自閉症児・者とその家族への支援が体系化されているノースカロライナ州であっても,自閉症児のきょうだいに特化した取り組みはなされていなかった。さらに,支援計画におけるきょうだいのニーズの位置づけ,支援計画作成の手続きやきょうだいへのアセスメント方法なども確立していないことが明らかとなった。 一方,IFSPの作成にあたっては,(1)家族とのパートナーシップ,(2)家族の問題・関心の優先,(3)家族がもつ力を強化する,(4)専門用語ではなく家族のことばを使用するなどといった家族主体の原則に基づき実施することが重要であることが示唆された。 次年度は,本年度の調査から得られた知見と研究代表者による従来の自閉症児・者のきょうだいへの教育的支援に関する知見を総合的に踏まえ,自閉症児のきょうだいへの教育的支援プログラム(試作版)を作成する。そして,ニーズのある家族を対象に支援計画を作成することを通して,きょうだいへの教育的支援プログラムの意義と問題点について検討を行う。
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