個別家族支援計画(以下、IFSP)の作成に関わる基本原則や様式、研究代表者(柳澤;2006)が考案した自閉症児・者のきょうだいへの教育的支援の段階表を踏まえて、一家族を対象に事例研究を行い、家庭でのきょうだいへの教育的支援の在り方を検討した。具体的には、自閉症児のきょうだいへの支援を視野に入れて母親支援を行うことにより、母親のきょうだいへの教育的支援に対する意識の変化とそのことできょうだいの自閉症である兄弟姉妹への関心や行動にもたらされる変化を時系列的に分析した。また、日常場面や設定した活動場面等での参与観察、家族への聞き取りから家庭でのきょうだいへの教育的支援に関わる項目(自閉症児ときょうだいの関係、きょうだいの理解の様相、家族構成員ときょうだい双方のニーズの関係性、自閉症児への対応と使用している支援ツール、きょうだいの発達的特徴、情報提供の在り方等)を抽出し、きょうだいへの教育的支援を目的としたIFSPを作成し、その使用の意義について検討した。本研究の結果、きょうだいの自閉症である兄弟姉妹に対する関心事項は、母親の問題意識に影響を受けることが示唆された。これより、母親への支援は、きょうだいを間接的に支援する可能性があると考えられる。また、きょうだいに自閉症である兄弟姉妹の示す行動やその意味の解釈の仕方、対応の仕方を映像で視覚的に示すことは、きょうだいの自閉症である兄弟姉妹に対する学びへの動機づけを高める手立てになると推察された。一方、きょうだいへの教育的支援を目的としたIFSPの使用は、日常、漠然と捉えられているきょうだいのニーズと家庭内での位置づけ、提供すべき内容と用いる教材、それらを使用することの効果等について親が考えを整理し、きょうだいへの家庭での対応方針を明確化するのに役立つと考えられた。
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