研究課題
2007年7月から9月にローヌ氷河における野外観測を実施した。熱水ドリルによって岩盤まで8本の掘削を行い、氷厚の正確なデータを得た。本観測によって得られた氷厚はこれまでに報告されていた値と大きく異なり、氷河変動モデルの精度を大きく向上するものである。また掘削孔のひとつを用いて測定した氷河底面の水圧は、日周期変動および季節変化を示し、氷河底面での流動に大きな影響を与えている可能性が見出された。氷河上ではGPSによって流動速度を連続的に測定し、数値計算の入力および検証データを得た。また気象データと表面融解量を測定し、氷河変動モデルにおいて夏季の融解量をより正確に見積もることが可能になった。2007年5月から8月にかけて、大学院生の西村大輔がスイス連邦工科大学に滞在し、航空写真の解析を実施した。この解析によって、1970年から2006年までの流動速度2次元分布を測定することに成功した。1874-1915年に行なわれた過去の観測を再解析した結果と合わせて、過去100年にわたる流動速度の変化が明らかになった。この成果は氷河の氷厚変化と流動速度との関係を明らかにする役割を果たし、山岳氷河の流動機構の理解を推し進めるものである。写真解析によって同時に得られた氷厚変化を使って、氷河横断面内の流動速度分布を数値モデルによって計算した。各年について測定された表面流動速度を再現するようモデルを最適化することで、氷河断面を通過する氷フラックスが厳密に計算された。このフラックスを入力データとして、ローヌ氷河の将来の変動を高精度に予測する数値計算が可能となった。以上の成果は2007年10月に実施された雪氷学会において、2名の大学院生によって発表された。
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http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/newsletter/no24/3.html
http://wwwice.lowtem.hokudai.ac.jp/works/sugiyama2.html