電荷秩序系の非線形伝導や相転移現象を利用した抵抗変化メモリの設計など、強相関電子系における輸送問題の研究が現在活発に行われている。本研究課題ではこの問題に対して理論的立場から大規模計算機を利用した数値計算を用いて研究を行っている。特に実時間、実空間における計算手法を重視しており、実験結果と比較できる研究を行っている。 1:時間依存密度行列くり込み群を用いて電荷密度励起の時間発展を計算した。これは強相関界面において電場を印可した後の緩和過程と密接に関連する現象である。電子(電荷の多い励起)と正孔(電荷の少ない励起)が衝突すると対消滅が起きることが確認された。流体力学的方程式を用いてこの結果を理解できるかどうかを検討している。 2:二次元拡張ハバードモデルにおける輸送現象を実時間モンテカルロ法(確率平均場理論)に基づいて解析することを目指している。この手法では時間依存平均場近似で無視されている二体散乱の効果をランジュバン雑音を利用して取り込むことが出来る。また、大きな特徴として、虚時間法を用いて有限温度の平衡系だけでなく、実時間の時間発展を追跡することにより非平衡系を見ることが可能である。初年度である本年度はプログラムの構築をおこない、現在はテスト段階にある。今後電荷秩序系などへの応用を行っていく。 今後の展開として、4月より米コロンビア大のMillisのグループと共同研究を行い、相転移点近傍での強相関電子系の非線形輸送現象について解析的計算とも比較しつつ研究を継続する予定である。
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