本年度は、不均一性に由来する巨大応答物性の起源を相転移におけるディスオーダー効果の観点から解明すべく、特にソフトモード型強誘電体として知られるABO_3型強誘電体の臨界挙動を、共焦点顕微ラマン分光法によって研究した。その結果、量子揺らぎが相転移物性を支配すると考えられてきた量子誘電体SrTiO_3において酸素同位体置換によって理論的な予測を実証する理想的なソフトモード型の量子相転移を誘起することを明らかにし、更にその量子臨界点において新奇な相分離状態を発見した。更に、ソフトモード型強誘電体におけるディスオーダー効果を正確に理解する為の基礎となる、典型的な均一系ソフトモード挙動を示す物質を物質合成の観点から新たに探索し、その結果、現在まで複雑な相転移挙動を有すると考えられそのメカニズムが未解明であったCdTiO_3において、典型的なソフトモードの臨界挙動を新たに発見し、CdTiO_3極めてシンプルな二次相転移を有する典型的ソフトモード型強誘電体であることを発見した。これまで強誘電体単結晶における分光学的研究は、相転移後に発生する複雑なドメイン構造によって精密な研究が困難な例が多く、これが物理的本質の理解を妨げていたが、本研究では共焦点法の応用によってこれを克服し、物性研究における分光学的研究の技術を大きく進展させた。更にこの技術を、強誘電体ガラスの結晶化過程の研究にも適用し、新規高屈折率ガラス材料として期待されているBaTi_2O_5ガラスの逐次結晶化過程を解明した。
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