研究概要 |
導電性高分子と液晶の2成分混合系の研究例はほとんどないため、液晶配向場を用いた導電性高分子の配向制御を試みるために、まず導電性高分子と良好な相溶性を持つ液晶系の探索を行なう必要があった。そこで、主鎖分子構造や側鎖が異なる数種類の導電性高分子を用いて、低分子液晶と良好な相溶性を示す導電性高分子の探索を行なった。具体的には導電性高分子と低分子液晶(7CB, E44, ZLI4792)との2成分混合系を調製した後、調製した混合試料をカバーガラスセルに導入して高精度温度制御装置が付属した偏光顕微鏡で、温度を変化させながら等方液体相(Iso相)とネマチック相(N相)での試料の相溶性や液晶相の組織変化を観察し、さまざまな温度における導電性高分子の液晶への相溶性およびベース低分子液晶の相転移温度の変化を評価した。その結果、ポリフルオレン骨格、フルオレン-ビチオフェン骨格、およびチオフェン骨格を有する導電性高分子では、ISO相でも相溶性が低く、凝集成分が観察されたのに対して、フェニレンビニレン骨格とフェニレンエチニレン骨格を有する導電性高分子は低分子液晶分子と比較的高い相溶性を示すことがわかった。側鎖構造では、直鎖アルキル構造よりも枝分かれしたエチルヘキシル構造の側鎖を持つ導電性高分子のほうが高い相溶性を示した。相溶性の検討結果から、特にポリ(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシロキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)とZLI4792の混合系が良い相溶性を示すことがわかったので、このZLI4792/MEH-PPV混合系を使用して、導電性高分子の配向制御の予備実験を行なった。具体的には試料をポリイミドラビング膜付きガラス配向セルに導入し、水銀ランプで励起光を照射して戻ってくる蛍光の偏光依存性を測定した。低分子液晶の配向方向と偏光板の方向が平行になったときに導電性高分子の蛍光強度が最大になる一方、垂直になったときに蛍光強度が最小になった。このように、導電性高分子/低分子液晶混合系を用いることで、低分子液晶の配向により、導電性高分子を配向させることができることを明らかにした。
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