18年度前半は、本課題で使用する主装置である1.5m光学赤外線望遠鏡の改造と調整作業を行い、その結果、本課題に必要な望遠鏡の性能を達成することに成功した。具体的には、4月に望遠鏡製作業者工場内において高機動な架台の動作を実現するために、方位軸及び高度軸の高速駆動速度をそれぞれ毎秒5度、および毎秒2度に設定し、実験と調整を行った。5月には望遠鏡を上記工場から東広島天文台に移設し、駆動実験を実施した。6月より望遠鏡の光学性能の改善及び、指向精度の改善作業を並行して行った。この他、10月までいくつかの初期不良箇所や誤動作を部品の交換や制御ソフトウェアの改良を行うことで解決し、結果として研究に必要な性能を得た。なお、この望遠鏡の愛称は公募の結果「かなた」に決定した。 18年度後半は、かなた望遠鏡を用いて突発天体現象に特化した観測システムの構築を開始した。まず、ガンマ線バーストに即時自動対応するため、ガンマ線観測衛星からの情報に応じて自動的に望遠鏡を向けるシステムを開発した。これによって、バーストから数十秒後の観測開始が可能となった。次に、かなた望遠鏡に同架した「補助望遠鏡システム」を構築した。具体的には、かなた望遠鏡に28cm鏡筒とCCDカメラを取り付け、遠隔操作での画像の取得に成功した。また、別の30cm小型望遠鏡を小型ドームに格納し、かなた望遠鏡とは独立して動作する「突発天体モニターシステム」の構築を開始し、ドームを望遠鏡に同期して自動で回転させることに成功した。以上の開発によって、突発天体モニターシステムによる定常的なモニター観測と、現象発生時にかなた望遠鏡と補助望遠鏡システムによる即時観測が可能となった。 この観測システムを用いて11月よりテスト観測を開始し、既にガンマ線バースト2例の観測に成功するなど初期成果を得て、国内研究会で発表した。
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