研究概要 |
当研究の研究課題は次の3つであった:(a)反円分的Z_p拡大における非可換岩澤主予想の証明、(b)2つの合同なガロア表現に対するセルマー群,p進L関数どうしの間の関係、及び(c)positively ramified拡大の岩澤理論。このうち本年度は(b)についてA.Iovita氏(コンコルディア大学、カナダ)との共同研究により進展があった。この研究では2つのガロア表現の間にpを法として合同関係があったとき、反円分的Z_p拡大上で片方の表現のセルマー群が岩澤代数上torsionかつμ不変量が0であれば、他方のセルマー群もtorsionであることを証明した。pのより高い巾を法として合同関係にあるときにはこのことが成り立っことを以前に示していたが、今回μ不変量が0になることを除いては期待する結果を得ることが出来た。岩澤理論で重要な保型形式に付随する表現は、別のある重さ2の保型形式の表現に合同であることが分かっており、後者のセルマー群についてはtorsion性などが分かっている。つまりこの結果は一般の保型形式のセルマー群のtorsion性を多くの場合に示すことになる。p進L関数たちの間のほうについてもその関係を調べる上で我々は新しい構成法のアイデアを得た。現在はその構成の正当性の確認及び所期の関係を得るべく努力中である。これらの結果は(a)の非可換主予想の証明に資するものであると考えているが、その証明までには至っていない。しかしながら(a)に関連した一般の非可換岩澤理論について、いくっか結果を得ることが出来た。一つはある種の(一般の)可解な(反円分的Z_p拡大とは異なる)広いクラスの非可換拡大に関して、楕円曲線のセルマー群のtorsion性を示したことである。セルマー群のtorsion性は岩澤理論の最初の一歩である。もう一つは、セルマー群のpseudo-null部分加群と呼ばれるある種の小さい加群の非存在についてのOchi-Venjakobの定理について原証明とは異なる簡明な別証明を与えたことである。Ochi-venjakobの定理は非可換岩澤理論の初期における基本的な結果であったが、今回非常に見通しのよい証明を与えたことで、この方面の研究の発展に大きく寄与すると考える。これらの結果は現在落合理氏(大阪大学)との共同の論文として準備中である。(c)については次年度の重点的な課題とする予定である。
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