平成19年度は、前年度収集したGPSデータおよびGPS-TECデータから、研究の基礎となるGPS-TECデータベース構築を行なうことから開始し、常時地球自由振動の励起源として存在が確実な大気擾乱に伴う振動を、GPS-TECデータから検出することを目的とするデータ解析を行なった。固体地球付近の下層大気には、230秒と270秒の周期帯に固有モードが存在し、固体地球と共振していることが知られており、本研究においても、この帯域を主たるターゲットとして解析した。GPS衛星システムは、23時間56分という24時間よりも4分短い周期で同じ配置となるため、これが研究対象となる帯域に影響を及ぼさないような解析方法を編み出すことに精力を費やした。 解析の結果、大地震直後にはGPS-TEC時系列データに明瞭な4分周期のモードが卓越することが判明し、固体地球の振動がはるか数百Km上空の電離層にまで影響が及んでいることが確認された。ただし、その他の時間帯にはそのような特徴的なモードは見当たらず、大地震以外の固体地球の振動に対する電離層の応答を調べるには、解析手法のさらなるチューニングが必要である。GPS衛星配位の周期が解析に及ぼす影響を再検討する余地は残されており、これらの課題を一つ一つ克服しつつ、下層大気が固体地球をランダムに叩いて常時地球自由振動を励起し、また下層大気が上層大気をランダムに叩いて電離層の固有振動を励起しているという描像を検証していきたい。
|