研究概要 |
本年度は,熱帯域におけるライダーの長期観測データの収集と数値モデルを用いた高度5km(0℃)付近における雲層の再現実験を行った. 「ライダーの長期観測データの収集」 本年度収集が完了したデータは, (1)国立環境研究所保有の熱帯西部太平洋上のデータ (2)米国Pacific Northwest National Laboratory保有のダーウィン,ナウル島,マヌス島のデータである.特に(2)に関しては,雲レーダ,Ceilometer,降水量のデータも併せて収集した.また首都大学東京保有のインドネシアスマトラ島のデータに関しても取得の手続きを取った.収集データは,現時点で700GBとなり,Raid Disk装置を購入し対応した.上記(2)のデータに関して,当初は現地に赴いての収集の可能性もあったが,担当者と打ち合わせした結果,直接現地に赴いて取得するよりも問題が少ないという結論に達したため,インターネット経由で約3ヶ月程度かけて取得した. 「数値モデルを用いた高度5km(0℃)付近における雲層の再現実験」 シミュレーションにはNCARで開発中の非静力学モデルWRFを使用した.数値モデルでも,観測で頻繁に見られる0℃付近における雲層の再現に成功した.この雲層に関して詳細に調べると,雲の凝結生成による加熱と融解過程による冷却が0℃付近の高度で,ほぼバランスしており,因果関係として後者が,前者を促していることが分かった.このようなメカニズムで,雲層が生成されることを指摘した研究は初めてであり,このメカニズムが,熱帯で良く観測される中層(特に5km,0℃付近)の雲層の生成要因になっている可能性が強く示唆された.またこの生成メカニズムから,熱帯対流圏中層の雲層は,層状性の降水が活発なときに頻出することが考えられる.今後収集データから,この点に注目して出現特性を調べていく予定である.
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