酸化物系における界面効果を利用したプロトン伝導性向上に関する多くの研究成果に関する文献調査を行い、本研究ではそのいくつかの問題点を解消するために新たに有機物系における界面効果を利用することを試みた。 本年度は界面効果によりプロトン伝導性を向上させるために必要と思われる分子設計を適切に行い、新規オリゴマー(分子量約3000)や高分子を合成した。本研究計画で購入を予定していた恒温恒湿器を購入し、インピーダンス法により新規重合体の電気伝導率を様々な相対湿度下において測定した結果、得られたいくつかの重合体の電気伝導率は5桁程度変化し、キャリアーがプロトンであることが示唆された。またそれらの電気伝導率の絶対値は、空間電荷層の形成による界面効果によってプロトン伝導性が向上することを想定した電気伝導率の値として適当であることがわかった。 また、金属の仕事関数を利用した界面における電荷移動型ヘテロ界面を作製するために、パルスレーザーデポジッション(PLD)法により1nmオーダーの薄膜作製条件を検討し、製膜後の表面の平坦性を観測した。実際には1nm以下の膜厚では表面を平坦にすることは難しく、金属が島状に堆積している可能性が高いことがわかった。 研究発表として本年度は3件の学会発表を行った。次年度はスピンコーターによりバルクと薄膜におけるプロトン伝導性の違いや、ヘテロ界面を有する薄膜におけるプロトン伝導性を調べることで界面効果とプロトン伝導性の関係を明らかにし、界面効果を利用したプロトン伝導性向上の実現のために必要な知見を調べていく。
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