本研究では、コロイド粒子を鋳型に用い、その表面に高分子電解質などを交互積層して作製したコア-シェル粒子を用い、鋳型の除去によって中空カプセルを作製し、さらにゾル-ゲル法などで無機材料をコーティングしてハイブリッド化を行い、新規材料を開発することを目的とした。この際に、無機材料に光機能性のものを使用することで、光に応答して内包物質を放出する特性を有する材料の創成を目指すものである。2年計画の初年度に当たる本年度は、まずコロイド粒子をテンプレートにした交互積層法によって作製したカプセルの有機-無機複合化に重点を置き、以下のような成果を得た。 (1)メラミン樹脂製コロイド粒子上にポリアニオン、ポリカチオンを交互に吸着させてコア-シェル粒子を作製し、コア粒子を塩酸で溶解させることで、高分子電解質多層膜からなる中空カプセルを得た。ゾル-ゲル法によって、この中空カプセル上に、SiO_2ならびにSiO_2-TiO_2を均一にコートして、ハイブリッドカプセルとすることに成功した。このTiO_2成分を含むカプセルではその光触媒作用によって、紫外線照射時に高分子電解質が分解され、カプセル殻を開裂させることができることが分かった。 (2)高分子電解質多層膜からなる中空カプセルに紫外線を照射した場合、カプセルが収縮する場合があることを見出した。この際、芳香環などの紫外線を吸収する官能基を有した高分子を用い、その官能基に対応する波長の紫外線が照射された場合にこの収縮現象が見られることを明らかにした。 (3)ポリアニオンを最表面に有する高分子電解質多層膜カプセル上に、カチオン性脂質であるジメチルジアリルアンモニウムクロリドの二分子膜をコートすることに成功した。さらにこの脂質二分子膜のゲル-液晶相転移挙動を利用して、色素などの低分子をカプセル内に封入できることが分かった。標識物質として色素であるフェノールレッドを封入した高分子電解質多層膜、脂質二分子膜、SiO_2-TiO_2ゲル層からなるハイブリッドカプセルの作製にも成功した。このカプセルは紫外線照射によってカプセル殻が開裂し、フェノールレッドを放出する特性があることが分かった。
|