本研究では、コロイド粒子を鋳型に用い、その表面に高分子電解質などを交互積層して作製したコアーシェル粒子を用い、鋳型の除去によって中空カプセルを作製し、さらにゾルーゲル法などで無機材料をコーティングしてハイブリッド化を行い、新規材料を開発することを目的とした。この際に、無機材料に光機能性のものを使用することで、光に応答して内包物質を放出する特性を有する材料の創成を目指すものである。本年度は以下のような成果を得た。 コロイド粒子を鋳型にし、その表面を高分子電解質の多層膜を積層してコアーシェル粒子を作製し、鋳型粒子の除去により中空カプセルを作製した。このカプセルに脂質二分子膜をコートすることで、カプセル内部に機能性低分子を封入することに成功した。標識物質として色素であるフェノールレッドを封入した脂質二分子膜/高分子電解質多層膜複合中空カプセルをさらにゾルーゲル法でSiO_2-TiO_2ゲル層でコートしたハイブリッドカプセルを作製して、紫外線照射による内包物の放出特性について評価したところ、紫外線照射でカプセル殻が開裂し、色素が放出されることが明らかになった。この際に、紫外線の照射時間やその強度と放出速度が変化することが分かった。さらに、SiO_2-TiO_2ゲル層の組成比を変えても、この放出特性の応答速度が変化した。これらから、様々な照度の紫外線に対応したカプセルを作り分けることができることが明らかになった。また、カプセル内部には機能性分子の水溶液のみならず、イオン性液体も脂質膜の相転移を利用して内包できることも明らかにした。これらの結果から、医薬品、化粧品、電子デバイス等様々分野に展開可能な光応答性の有機-無機ハイブリッド中空カプセルの創成に成功した。
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