天然多糖であるカードランは、水溶性が低く機能化に不利であった。そこで、本研究では、クリックケミストリーを利用することでカードランに対して位置選択的に官能基を導入する手法を開発した。カードランやシゾフィランなどのβ1→3グルカンは、水溶液中で強固な三重らせん構造をとることが知られている。また、溶媒やpHの変化により、その構造を変換することが明らかにされている。このようなβ1→3グルカンにさらなる機能付与することを目指し、今回新たに開発した手法によりカードランに金属応答部位を新たに導入した。その結果、らせん構造の金属イオンによるスイッチングシステムの構築に成功した。これによりゲスト分子の包接や放出の金属イオンによる調整が可能となった。また、前年度までに特異的なゲスト包接挙動を示すことを明らかにした四級アンモニウム基を導入したカードランに関して、これまで天然のβ1→3グルカンでは形成することのできなかったヘテロシークエンスのオリゴ核酸とも複合体を形成し、細胞に効率的に導入できることを明らかにした。特に、CpG配列を有するオリゴ核酸をマクロファージ用細胞に導入する実験を行ない、汎用されているポリカチオンに比較して効率良いサイトカイン(IL-12)の産出を誘起できることを明らかにした。以上の結果は、天然型β1→3グルカンの持つ特性を活かしつつ更なる機能の付与が可能であることを示すものである。従って、本研究で得られた成果は、学術的にも興味深いのみでなく多糖類の高機能性ナノマテリアルとしての活用に貢献するものと期待している。
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