有機EL素子やレーザーに代表される光エレクトロニクスからバイオモニタリング・トレース研究に至るまで、発光材料は実に幅広い分野で活用されている。現状、もっとも多用されている材料群は、有機系蛍光色素である。蛍光効率が高く、また、デバイス組み込み時において形成される異種結合界面で生ずる界面エネルギーを緩和するための有機分子修飾が容易、といった有意性から、非常に幅広い分野で汎用されている。しかしながら、有機色素に固有の励起時間に伴う著しい退色性は、上記したアプリケーション化に極めて不都合である。 本研究では、まず、有機色素の蛍光クリップとしての機能性を評価するために、アミノ基終端の自己組織化単分子膜マイクロパターンのイメージングに挑戦した。蛍光イメージングを行うために、アミノ基と特異的に結合することで蛍光性を発するフルオレスカミンを利用した結果、アミノパターンを蛍光イメージングすることには成功したものの、退色は極めて早く20秒後にはパターンを観察できなくなった。このような研究事実を背景に、蛍光性半導体材料の中でも特に「環境に調和した素材」であるシリコンナノ結晶粒子に着目し、さらに「循環社会型有機プローブ搭載シリコンナノ結晶粒子合成手法」を確立するために、レーザーを用いた作製法の開発をすすめた。その結果、液相法では困難とされた粒度分布の極めて狭い(2.5±0.5nm)結晶性粒子を再現性よく作製できる条件を明らかにした。この粒子の光物性を検討したところ、吸収は、290nm前後に、また、発光スペクトルからは、ブルーシフトが観察され、400nm前後に発光ピークトップを有することが明らかとなった。現在、シリコン表面における有機分子反応の詳細に関して鋭意研究を行っている。
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