研究概要 |
本研究では発電用ならびに産業用蒸気タービンの性能を最大5%向上させることができる革新的なタービン翼形状・翼配置を見出すことを最終的な目標としている. 本年度は非平衡凝縮を考慮できる蒸気タービン数値解析システムを構築し,蒸気タービン内部の流れ場を東北大学情報シナジーセンターが所有するスーパーコンピュータ・SX-7上で仮想的に再現し,非平衡凝縮を伴う遷音速流れ場内部での凝縮現象の捕獲および解明を行った.この際,SX-7の1ノード当たりの理論最大性能値である2048.56GFLOPSが完全に発揮されたとしても,1ケースの計算に数百CPU時間が費やされるとの試算が得られたため,計算コードのアルゴリズムやデータ構造をベクトル計算機向けに改良する必要が生じた.結果的に本計算コードのベクトル化率を94.1%から99.3%へと大幅に改善することができ,計算時間は従来の15%程度にまで短縮された. 蒸気タービン全段全周周りに対し適用される格子点数は数億点を大きく上回ることになるため,本研究では計算格子を効率よく生成するためのソフトウェア開発が不可欠である.そこで,前処理エンジンとして計算格子生成ならびにその可視化ソフトウェアを開発した.前処理エンジンは画像処理能力の優れたPC上に導入し,グラフィックスワークステーション(GWS)を構築した.また,次年度の研究計画に盛り込まれている後処理エンジンの一部である,流れ場可視化ソフトウェアならびにデータ処理ソフトウェアの開発は本年度中に行った. ところで,凝縮流れには相似則が成り立たないという特徴がある.よって,蒸気タービン内部で形成される非平衡凝縮流れの実験的な再現を試みる場合,実機と同規模の実験装置が必要となり,大学の施設では実現困難である.そこで,本研究では国内重工企業より翼形状や実験データの提供を受け,これを解析対象とした.
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