研究概要 |
平成18年度は,線形状態空間システムの可制御性・可観測性・正実性・有界実性と,周波数変換との関係について数学的に議論した.また,本課題と密接に関連したテーマとして,電力相補システムを状態空間表現に基づいて解析し,システム内部の挙動の観点から,電力相補システムの性質を議論した.具体的には,以下のように研究を行った. 1.本申請者がこれまでに提案している「可制御性・可観測性グラミアンを保存する周波数変換」の記述法に修正を加えて,この周波数変換を従来よりも簡潔な数式で記述した. 2.線形連続時間システムおよび線形離散時間システムの有界実性・正実性と,周波数変換との関係について考察した.この結果,可制御性や可観測性と同様に,有界実性・正実性も周波数変換の前後で保存することが可能であるという性質を数値的に確認した. 3.2次元システムの可制御性・可観測性と周波数変換との関係について考察した.2次元システムでは,1次元システムの揚合とは異なり,周波数変換の関数が特別な条件を満足する揚合に限って,周波数変換の前後で可制御性・可観測性が保存されることを数値的に確認した. 4,連続時間の電力相補システムを状態空間表現に基づいて解析し,システム内部の挙動と関連した新しい性質を数学的に証明した.具体的には,電力相補システムの係数・極・零点・可制御性・可観測性の間に成立する新しい性質を発見し,それらに対する証明を与えた. 5.上に述べた結果のフィルタ設計・実現技術への応用にっいて検討した.その結果,アナログフィルタやディジタルフィルタの設計・合成技術に本研究の成果を応用することにより,精度の高い構造を保ったままフィルタ特性を自由に変更することが可能であるということを明らかにした.
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