貴金属を含まない金属ガラスのポーラス体を作製するために下記の二点の実験を行った。 (1)Zr-Nb-A1-Ni-Cu合金と酸化物焼結体スペーサを用いたポーラス体作製 希土類酸化物の焼結多孔体をスペーサとしてZr-Nb-Al-Ni-Cu合金を加圧含浸急冷後、スペーサを除去してZr-Nb-Al-Ni-Cuポーラスバルク金属ガラスを作製した。X線回折法による相同定の結果、ポーラス材が金属ガラス単相であることを確認した。スペーサの焼結条件を変化させることによってポーラス金属ガラスのポロシティを60〜70%の範囲で制御することが可能であった。得られたポーラス金属ガラスはボアが内部で連結したオープンセル構造を有しており、150〜250MPaの高降伏強度を有しつつ、見かけの弾性率を生体緻密骨とほぼ等しい15〜20GPaに低下できることが分かった。また、ポーラス化によって表面積が同形状を有する緻密体の数百から数千倍に増大したが、擬似生体液中での陽極分極測定から耐食特性は非ポーラス材とほぼ同等であることが分かった。現在、ポーラスバルク金属ガラスの表面処理による生体活性化の有無などの研究に取り組んでいる。 (2)Zr-(希土類金属)二相金属ガラスを前駆体としたポーラス金属ガラスの作製 Zr-(希土類金属)-Al-Ni合金におけるZrと希土類金属の液相相分離傾向と金属ガラス過冷却液体状態での増粘現象の組み合わせによって、組織制御された二相金属ガラスの作製を行った。Zr-(希土類金属)の二相金属ガラスはZr基金属ガラスがより高い耐食性を示すため、二相金属ガラスを電気化学的に処理することでポーラス金属ガラスを作製した。二相金属ガラスの組織は、合金成分、合金組成、試料作製条件に依存しており、これらを変化させることで、ナノからミクロンサイズの配向した(もしくは無配向の)ボアを有する金属ガラスが作製できた。
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