研究概要 |
本研究の目的は,微小試験法の一つであるシェアパンチ試験法と,有限要素法を用いた逆問題解析技術とを融合することにより,微小試験法のみを用いた従来の強度特性評価では成しえなかった,標準試験片による単軸引張試験と同等な材料の弾塑性変形挙動データが取得することのできる評価手法を開発し,手法を大型溶接構造部材の構造強度評価に適用し有効性を実証することにある. 平成18年度は,まずシェアパンチ試験システムの整備を進め,オーステナイトステンレス鋼SUS316鋼の非溶接材のシェアパンチ試験データ(荷重一変位曲線)を取得した.また,比較のため同材料の短軸引張試験データ(応力-ひずみ曲線)を取得した.シェアパンチ試験は,試験片厚さ方向の結晶粒の数を変数として実施し,試験片寸法効果のない試験条件としては,(試験片厚さ/結晶粒径)が約5以上であることを明らかにした. 次に,本補助金により有限要素解析のためのプリ・ポストプロセッサ等を購入し,有限要素解析のためのシステムを整備した.有限要素法プログラムとしては,現有のANSYSを用いた.シェアパンチ試験を模擬した有限要素解析においては,要素としては軸対象要素を,材料データとしては前述の短軸引張試験データを用い,主な接触部位には摩擦係数を変数とする接触要素を適用した.有限要素解析結果と前述のシェアパンチ試験データを比較検討することにより.解析における境界条件の最適化を実施した.その結果,パンチと試験片および試験片と固定冶具の接触面の摩擦係数を適切な値に設定することにより,比較的精度良くシェアパンチ試験結果を模擬できることを明らかにした.この最適化した境界条件による有限要素解析により逆問題解析アルゴリズムの構築を開始し,平成19年度における完成の見通しを得た.
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