当研究では、昨年度に引き続き、光ファイバの分布型計測技術を複合材料構造に適用することについて基礎的な検討を行った。昨年度の研究においては、分布型計測技術の適用可能性について、理論、実験の両面から十分な事前検討を行った。本年度は、(1)VaRTM成形中の成形モニタリング、及び、(2)オートクレーブ成形中の成形モニタリングを実施し、昨年度に得られた知見に基づいた研究を実施した。 まず、VaRTM成形中の成形モニタリングに関しては、メートルオーダーの供試体作成を実施し、成形中の温度分布計測および熱残留ひずみ計測を試みた。数回の試作を行った結果、通常使用される光ファイバセンサにおいては、埋め込み時のマイクロベンド損失がPPP-BOTDA方式の許容損失量を超えてしまうことが判明した。これに対して、通常よりも屈折率差の大きい光ファイバセンサを用いることでこの問題が克服できることを、通常の光ファイバセンサ、および、細径光ファイバセンサの両方において実証することができた。さらに、供試体端部において、ブリルアンスペクトルの形状が変化していることを確認した。これは、昨年度の研究結果から、供試体端部における不均一なひずみ分布がブリルアンスペクトルの形状に影響を及ぼしたものと推察される。この成果により、PPP-BOTDA方式の空間分解能向上に伴い、製造時の初期不良検出、さらには、材料内の微視的損傷検出への応用が期待できる。 次に、オートクレーブ成形中の成形モニタリングに関しても同様な供試体作成を実施した。VaRTM成形と同様に、通常の光ファイバセンサではメートルオーダーの計測が難しいこと、そして屈折率差の大きい光ファイバセンサでその課題が克服できることを実証した。以上の成果より、当研究により光ファイバの分布型計測技術が複合材料の成形モニタリングに適用可能であることを示すことができた。
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