研究概要 |
CNx (Carbon Nitride)膜は窒素雰囲気中において無潤滑でありながら0.01以下の超低摩擦となることが既に報告されているが,その原因としてCNx膜最表面に吸着している極性基が摩擦係数減少の要因と考えられるが,摩擦直後の表面を分析する際に,分析装置までの搬送経路において吸着基の大気中成分分子(主に酸素分子)との置換が起こっているものと考えられ,正確に分析が行えない問題が発生している.そこで,チャンバー内にて分析可能なFT-IR(フーリエ変換赤外分光)装置内に摩擦試験器を導入し,摩擦中にCNx膜表面に吸着した極性基を直接分析可能な装置の開発を行い,吸着極性基の種類と量を明らかにする. 分析用チャンバー内に摩擦試験機を導入するため,ピンオンディスク型摩擦試験機の試作及び動作確認を行い,摩擦試験が可能な状態となった.一方,分析用試験片として幅10mm,長さ30mm及び厚さ0.35mmのシリコン基板の短辺を45°の角度に研磨し,分析可能な台形形状へ加工を施した.この試験片表面にCNx膜を100nm成膜した.成膜はカーボンターゲットをArイオンビームでスパッタし,炭素原子発生させるのと同時に,成膜面へ窒素イオンビームを照射するダイナミックミキシング法により行った.このようにして得られたCNx成膜試験片と,比較用にSi基板のみを台形形状に作製した試験片のFT-IR分析を行った. 分析は400-1000cm^<-1>までの赤外分光範囲において行われた.得られた分析結果から以下の結合が存在することが明らかとなった.1000-1400cm^<-1>のピークはC-N及びC-Cの一重結合を示し,1400-1600cm^<-1>のピークはC=C二重結合を示している.これらはCNx膜内部の結合形態と一致し,膜内部の情報が得られている.一方,1000cm^<-1>付近のピークはC-O結合であり,3000cm^<-1>付近のピークはC-H結合に由来する情報である.摩擦前のCNx膜表面には酸素,水分が吸着していることが明確となった.
|