研究概要 |
CNx(窒化炭素)膜とSi_3N_4(窒化ケイ素)材料の窒素中超低摩擦現象は,窒素雰囲気中において任意のくり返し摩擦の後に得られるが,このなじみ期間において摩擦面での極性基の増減あるいは変化は明らかでなく,従来の表面分析手法では,摩擦試験と分析を同時に行えないことから正確な表面状態を把握することができなかった.そこで本研究では,より正確な分析を行うために,FTIRチャンバ内にて摩擦試験とその場分析可能な摩擦試験装置を試作し,窒素中及びアルゴン中の摩擦に伴うCNx膜極表面の官能基の変化を明らかにした.得られた主な結果を以下に示す. Si_3N_4円筒側面とCNx膜を荷重0.2N,ヘルツの平均接触圧力3.85MPaにて窒素中摩擦試験を行い,その場分析を行った.その結果,CNx膜最表面に吸着した官能基である-NH及び-OH結合に対応するピーク面積は,摩擦初期においては0.10程度であったが,4000サイクルまで摩擦係数が0から0.6程度であった間に,ピーク面積は増加し最大で0.16になった.その後4500サイクル程度からの急激な摩擦係数の減少に伴いピーク面積も急激に減少し,摩擦係数が0.01となる超低摩擦現象を発現した時には,摩擦初期の面積より小さい0.051(平均値)程度となった.これらの官能基の変化は,摩擦試験と分析を同時に行うその場分析を行ったことにより,初めて観察することができた. 以上の結果から,極性を持つ官能基である-NH及び-OH結合のCNx膜最表面での形成・脱離が摩擦力に影響を及ぼしていることを提案した.
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