研究概要 |
1.原子間力顕微鏡を用いてSi(111)-(7×7)表面のSiアドアトムの水平原子操作を行い、同時にフォーススペクトロスコピー測定により、探針先端とSiアドアトムとの相互作用力を測定し、水平原子操作が比較的弱い引力で引き起こされることを突き止めた。また、室温での熱エネルギーが水平原子操作のために必要である熱活性型の原子操作であることを明らかにした。さらに、理論計算との比較により、探針先端の原子がSiアドアトムを引っ張り上げることによって、下地の原子との結合を弱め、原子移動のためのエネルギー障壁が下げられるということを明らかにした。計算されたエネルギー障壁は、実験結果をよく説明することが分かった。 2.4属元素であるSi, Sn, Pb原子の3種類が混在した表面を原子間力顕微鏡で観察し、フォーススペクトロスコピーによる元素識別を行った。この試料は、走査型トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡の凹凸像からでは3元素が識別できないことが知られている。それぞれの化学結合力を測定すると、値が探針に強く依存するものの、Si原子に対するSn原子とPb原子の化学結合力の比をとると、それぞれ77%,59%となり探針に依らない不変量になることを発見した。これを利用することによって、画像の全ての原子に対して3原子種を明確に識別することに成功した。また、3属元素であるIn原子でも同様の実験を行い、比が72%になることが分かり、この元素識別法が半導体中のドーパント・不純物の元素同定に応用できることが明らかになった。
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