| 研究概要 |
前年度までに提案した,紫外レーザ誘起構造変化と熱誘起相変化を組み合わせたガラスの新たな構造制御手法について,その制御機構の検討を行うとともに,この手法を用いてガラス製チャネル導波路型バンドパスフィルターへの応用を行った.本研究を通して得られた知見を以下に示す.
1.Geナノ粒子からなる周期構造を2種類のチャネル導波路構造中に形成した.また,この周期構造は,通信波長帯において高い回折効率と熱的安定性を備えたブラッグ・グレーティングとして機能した.
2.チャネル導波路中に周期構造が形成されたことをHF溶液でエッチングによって確認した.周期構造では,組成の違いに起因していると思われるエッチングレートの違いがあり,チャネル構造においては薄膜表面部だけでなく,側壁部でも周期的な凹凸が観察された.
3.Geナノ粒子は,ガラス薄膜の表面近傍だけではなく,表面から数ミクロンにわたって析出していた.Geナノ粒子からなる周期構造を内装した導波路の透過スペクトルを測定したところ,TE-,TM-like両偏波モードについて同程度の回折効率が得られた.このことは,周期構造が導波路断面方向にほぼ均一に析出していたことを意味している.また,この結果は,上記のHFエッチングによる実験結果ともよく整合した.
4.レーザ誘起構造変化と密接な関連がある,Ge関連の酸素不足型構造欠陥に由来した蛍光スペクトルを測定したところ,Geナノ粒子が析出する際には,その蛍光強度は,特異的かつ顕著に減衰した.このことは,これら構造欠陥の還元によってGeナノ粒子が形成されたことを強く示唆していた.
これらの知見を,学術論文や国内外の学会において発表した.
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