研究概要 |
シス型,トランス型両方のゴム(ポリイソプレン)を産生する唯一の植物であるサポジラを材料として,未だ明らかにされていないポリイソプレンの鎖延長・停止機構の解明を目指して研究に取り組んだ.18年度は,まず,サポジラが産生するポリイソプレンの詳細なキャラクタリゼーションを行うとともに,産生部位を特定するために組織学的な解析を行った.また,メタボローム解析のfirst stepとして,ポリイソプレンの前駆体であるポリプレノールにターゲットを絞り鎖長分布等について解析した. 1.ゴム成分のキャラクタリゼーション サポジラの果実および葉からのゴム成分の抽出・精製し(含量:果実2.6%,葉3.9%),サイズ排除クロマトグラフィーならびにNMR分析に供し分子量分布および構造を調べた.果実においては低分子量のトランス型ポリイソプレンと高分子量のシス型ポリイソプレンが混在していることが明らかになった.また,一方,葉由来のゴム成分は,そのほとんどがトランス型のポリイソプレンであることがわかり,器官によってポリイソプレンの生合成のメカニズムが異なることが考えられた. 2.組織学的解析 各種色素染色および顕微分光分析により,各ポリイソプレン産生部位の組織解析を行った.師部側にポリイソプレンが合成・蓄積される筒状の乳管組織が存在することが明らかになった. 3.メタボローム解析 サポジラの果実および葉よりポリプレノールを抽出し,HPLCにより鎖長分布を調べた.他の生物にも認められる30量体までのポリプレノールの他に,ポリイソプレンにいたる長鎖ポリプレノールの存在も認められた.また,ポリイソプレンと同様に果実と葉では異なる鎖長分布を示した.19年度以降には一次代謝物および関連代謝物の網羅的な分析を行い,ポリイソプレン,ポリプレノールとの相関関係について詳細に解析する予定である.
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