本年度においては、有限要素法を用いた数値解析により、梁の伸び出し変形をうける鋼柱の火災時挙動を検討した。本数値解析には8節点板要素による有限要素モデルを用い、これより火災加熱を受ける鋼柱の3次元挙動を明らかにする。非弾性域における鋼板の座屈現象を解析するため、数値解析には材料非線形および幾何学的非線形効果がそれぞれ考慮される。 先ず、本数値解析法の妥当性を検討した。これは既往の実験結果を用いた。実験結果には、既往の高温時における鋼スタブコラム(短柱)の実験結果を用いた。数値解析においては、実験の試験体を忠実に再現し、また高温素材試験より得られた鋼の高温時応力〜歪を組み込むことで、試験体の高温時挙動を再現した。 次に、梁の伸び出し変形を受ける鋼柱の耐火性能を、前述の数値解析を用いて検討した。鋼柱の柱上端に梁の伸び出し変形を想定した強制水平変形を与え、鋼柱を一様に温度上昇させる。梁の伸び出し変形は柱の部材温度上昇とともに増加させる。この場合の柱は、長期荷重による軸圧縮力の他に、この梁の伸び出しによる逆対称型の曲げモーメントを受ける。本解析から、この伸び出し変形によって柱に局部座屈が発生するか、局部座屈の発生により柱の全体座屈が誘発されるか、局部座屈後も柱は長期荷重を支持できるか、局部座屈と全体座屈が連成するか、などの問題点を解明した。本数値解析では、加熱される梁スパン長の大きさ、柱軸力の大きさ、柱幅厚比、柱細長比をそれぞれ解析パラメータにとり、パラメトリックに解析を進めた。
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