研究概要 |
平成18年度はマルチフェロイック材料の薄膜試料を科学溶液堆積法により作製し、強誘電性と磁性についての評価を中心に行いました。我々は数あるマルチフェロイック物質の中でも、常圧合成が可能なBiFeO_3および高圧でしか合成できないBiMnO_3を中心に研究を行いました。その結果、BiFeO_3薄膜に関しては高い保磁力(0.7kOe@RT,1.1kOe@100K)および高い残留分極値(89μC/cm^2@90K)が得られました。残留分極は実用されているPZT薄膜に比べてもかなり高い値であることからPZTに代替する新材料としての魅力があります。しかし、リーク電流密度が高く室温での強誘電性の評価は困難であり、応用上の欠点があります。そこで我々はBiFeO_3薄膜のリーク電流メカニズムについて検討を行なうことにしました。その結果、BiFeO_3薄膜のリーク電流メカニズムは印加電界の大きさにより変化することがわかりました。低電界側ではSchottky-emissionもしくはOhmic電流が支配的で、電界の増加とともにPoole-Frenkel(PF)trap limited電導に切り替わり、さらに高い電界では空間電荷制限電流へと三段階変わることがわかりました。光電子分光測定の結果、PFはBiFeO_3の酸素欠損が原因である可能性が高く、本来3価であるはずのFeが電荷中性を保つために2価へ変化しており、そのためリーク電流が高くなっていることが示唆されました。従って、熱処理中に酸素を流通させるなどして酸素欠損を補うことでリーク電流を低減させる等の工夫が必要であることがわかりました。次に、単結晶基板上に高圧相であるBiMnO_3薄膜の作製を試みました。結果として高圧相であるBiMnO_3はSrTiO_3(100)基板上へ<111>エピタキシャル成長しました。単相の作製範囲は狭く、650℃の熱処理時のみでほぼBiMnO_3単相エピタキシャル薄膜を得ることに成功しました。平成19年度はBiMnO_3単相エピタキシャル薄膜の強誘電性および磁性について検討したいと思います。また、我々は誘電率測定装置に外部磁場を印加したME効果評価装置も作製中であり、BiFeO_3およびBiMnO_3のME効果について検討する計画であります。
|