研究概要 |
CFRP積層板の適用拡大に伴い,層間強度の弱さが構造信頼性低下を導くことが懸念されている.そこで本研究では,稼働中や保守点検中に短時間ではく離検出可能であり,低コスト,システム補修容易な電位差法を用いたモニタリング手法の開発を行った. これまでの研究ではその基礎的な有効性検証の観点から,直交積層梁型試験片を用いてはく離同定が可能であることを明らかにした.しかし,航空機等の実機構造では積層構成がより複雑であり,同定すべき変数の数も多い複雑な逆問題となる.このため本手法の実機適用を目的とした発展的研究が必要である. これまでの直交積層梁型試験片の場合と同様の電極形状,電極配置をそのまま実機構造に用いられる擬似等方積層板へ適用した結果,同定精度が低下することが明らかになった.これは,強い電気的異方性のため,はく離検出に必要な板厚方位電流を十分に生じさせることができないためであった.そこで,積層板内部の電流経路を数値解析によって明らかにし,その結果に基づき,より最適な電極形状や電極配置等について検討した.具体的には,1対の電流電極帯を表面繊維方向に直交する様に積層板両面に作成し,また,複数の電圧電極を積層板片面の電流電極近隣に設置する新しい方法を提案した.この方法によりはく離検出が可能であることを数値解析を用いて示した.しかし,解析でのはく離モデルは単一層間にのみ生じる場合を考慮したが,他の層間にはく離が生じる場合には同定が困難であることが明らかとなった.これは異なる層間にはく離が存在する場合,電位変化が大きく異なることが原因であった.異なる層間にはく離が存在する場合も考慮することですべてのはく離を精度良く同定することが可能となったが,実機構造においてその膨大な数の数値解析を行うことは困難である.今後,少ない解析及び実験結果ですべてのはく離を同定できるように手法を改善する必要がある.
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