平成18年度での実績は下記のとおりである。 1.最大周期系列設計のための離散カオス写像の構成法の確立 カオス写像のデジタル近似として離散化カオス写像を提案し、そこから得られる最大周期系列設計の方針を理論的に示すことができた。単純な離散化シフト写像の場合、写像の遷移関係を有向グラフ表現した際に、最大周期系列とオイラー小径が等価であるという洞察の下」グラフ理論のオイラー小径生成手法を取り入れることにより最大周期系列設計を可能にした。また、より一般化された離散カオス写像の場合において、互換の作用により最大周期系列が設計可能となることを理論的に示し、その洞察に基づき多数の最大周期系列を設計するアルゴリズムを提案し、その有効性を示すことができた。 2.マルチパス環境下非同期DS-CDMA方式への提案符号の適用 上記提案手法から得られる最大周期系列をCDMA方式の拡散符号として応用した際の通信の性能評価(ビット誤り率)を通信シミュレーションにより測定した。その結果、従来より用いられるシフトレジスタ系列よりもビット誤り率が改善可能なだけでなく、理想的なカオス符号よりもビット誤り率が改善できることを数値計算により示すことができた。想定した通信環境はレイリー分散環境としており、実用に近い環境において上記の優位性を示すことができたことは重要である。 平成18年度までの成果より、本研究の提案符号は(1)符号の多種類性、(2)通信品質の改善の2点において、従来より用いられるシフトレジスタ系列と比べ優位性を示すことができた。上記結果より、本申請者が提案するデジタルカオス符号は、CDMA用拡散符号の良い候補として期待できる。
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