H18年度の研究により、塑性流動を利用して種々の微細強化粒子をマグネシウム合金(AZ31)の摩擦攬拌部に分散させることが可能となっている。微細強化粒子の分散により摩擦攬拌部の機械的特性が改善されることが明らかとなり、特に、フラーレン分子を用いた場合には摩擦攬拌部の硬度が母材の約3倍に向上した。この結果を踏まえ、H19年度はフラーレン分子の複合化メカニズムを詳細に検討し、強化粒子を自在に摩擦攬拌部に分散させる摩擦攬拌条件の指針を得た。 様々な条件で代表的なアルミニウム合金であるA5083にフラーレン分子を分散させた結果、摩擦攬拌条件(金属材料に圧入する円柱状ツールの回転速度及び移動速度等)が微細強化粒子の分散状況と密接に関係していることが明らかとなった。具体的には、微細強化粒子はツールの回転ピッチ(移動速度/回転速度)に対応し、金属材料中に縞状に分散する。つまり、回転ピタチを小さくすれば微細強化粒子は密に分散し、回転ピッチを大きくすれば粗に分散することになる。また、添加する微細強化粒子の量によって回転ピッチ間における微細強化粒子の広がりを制御できる。フラーレン分子が分散している領域の母材結晶粒は〜200 nmにまで微細化されており、硬度は母材の約2倍の値を示した。加えて、フラーレン分子を分散させた摩擦攬拌部を300^℃で保持したところ、顕著な母材結晶粒の粗大化等は確認されず、優れた熱安定性を有していることが確認された。 フラーレン分子の分散による摩擦攬拌部の高強炭化は無酸素銅(C1020)及ひマグネシウム合金(AZ31)でも確認されており、摩擦攬拌部合部の高強度化に広く用いることができる効果的な手法であることが明らかとなった。
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